重なる身体と歪んだ恋情

「よかった。あぁ、ドレスは昨日とは違うものを。出来れば明るい色がいいですね。小雪、そう言ったものはあったかな?」


どうして、私ではなく小雪なんだろう?

そう思わなくも無いけれど如月は気にすることなく私の前に焼きあがったパンを置いてくれたからそれに手を伸ばす。


「真っ赤なものと薄い琥珀で光沢のあるものが」

「ではその琥珀色のものを」

「畏まりました」


勝手に決まっていく私の衣装。

何でもいいわ。

所詮、私は隣に立って笑っているだけの人形なのだから。



それから奏さんはお出かけに。

日曜日は基本お休みだと如月が言っていたような気がするけれど、結婚して彼がこの家に一日居たことは無い。


「早く帰りますから支度をお願いしますね」


その台詞は誰に言ったものなのかすら分からない。だから、


「いってらっしゃいませ」


使用人たちと同じ位置でそういって頭を下げると、


「行ってきます」


彼はそう返して車に乗り込んだ。

黒い煙と砂煙と、ひどい雑音を響かせて進む車。

空を仰げばどんよりとしたくもが立ち込めていて。


「そろそろ梅雨入りするのかもしれませんね」


そんな如月の声に私の心にはさらに分厚い雲が立ち込めていった。
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