重なる身体と歪んだ恋情
昨日と同じように如月の運転する車に乗って会場へ。

横浜までの道のりは長い。

太陽はゆっくりと色を変えていく。

途中、花屋さんによって抱えるのが精一杯なくらいの花束を如月が持ってきた。

助手席に置かれたそれは強い香りを放って。

帰りたい。

どこに帰りたいのか分らないけど、とにかく帰りたくて……。


「千紗さん」

「――はいっ」


突然声をかけられて思わず肩を震わせてしまった。


「もっと楽にして。英語は聞いていればすぐに慣れます」


クスクス笑われて、「……はぁ」と答えておいた。

別に英語がいやなわけじゃない。

いや、確かに嫌いだけど。

そうじゃなくて……。

なんて言い訳なんて何の意味も持たないし、車は目的地に着いたらしくゆっくりと速度を落として止まった。


「行ってらっしゃいませ」


頭を下げる如月の前を通って彼の後を歩いて。


「大丈夫です」

「えっ?」


如月の声に振り返ると、とても珍しい笑みを浮かべた如月の顔があった。


「落ち着いて会話を聞いてください。英語なんてものは単語さえ理解できれば何とかなりますよ」


そうかしら?

と思わなくも無いけれど、だけどなんとなく嬉しくて。


「頑張ってみます」


そう答えると如月はフッと口元を緩めて、その表情を隠すようにもう一度頭を下げた。
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