重なる身体と歪んだ恋情
その後もアビーさんは奏さんから花束を受け取って何か話してて。

彼女の腕は奏さんの腕に絡まってたり。

一応傍でその話を聞いてみたけれどはっきりとは聞き取れない。

多分、ドレスが似合うとか、この花が好きだとか話してるんだと思う。

自信は無いけれど。

如月の言うとおり単語を拾い集めて理解して……。

なんて。

なにをやってるのかしら。

彼女を花束を傍の使用人に渡すと奏さんの腕を引っ張って山積みされてる箱の前に連れて行く。

綺麗な包装紙やリボンで結ばれた箱たち。

きっと頂いたプレゼントなのだろう。

すると奏さんがポケットの中から小さな箱を取り出して。

彼女の顔が笑顔ではち切れそうになる。

そういえば私は彼女に『おめでとう』の言葉をかけていない。

けど、もうどうでもよくて。

会場の中央から離れて外に通じるテラスに足を向けた。

夜風を頬に感じて大きく息を吐き出す。

すると音楽が流れ始めて。

アビーさんは傍にいた初老の男性と踊り始めた。

他の人たちはそれを微笑ましそうに眺めているだけ。

きっとあの方が旦那様なのね。

曲調が変わって、彼女の白い手は奏さんに伸ばされる。

彼はそれに応えるように彼女の手を取りその甲にキスを。

そして踊り始めたんだと思う。

想像でしか言えないのはもう見ることを辞めたから。


テラスの柱に体を預けて空を見上げる。

だけど空は真っ暗で。

きっと分厚い雲が月の光も星の瞬きも遮っていた。
< 173 / 396 >

この作品をシェア

pagetop