重なる身体と歪んだ恋情
ワルツは無難に踊れたと思う。


「それではおいとましましょう。挨拶してきますので」


奏さんは私から離れてアビーさんのところへ。

「No!」なんて声が聞こえていたけど最後には抱き合ってお互いの頬にキス。

外国の方にとっては当たり前のこと、なのよね?

だってアビーさんの旦那様らしき人は何も言わない、と言うかもう会場には姿がなかったけど。


「行きましょう」


そういわれて手を差し出されたけど、その手をとる気にはなれなかった。

奏さんは少し不思議そうに首を傾けたけど歩き出す私を気にすることなく彼も歩き始める。

車まで戻れば如月が待っていて開けてくれたドアから車内へ。


「お疲れ様でした」

「さすがに疲れますね」


そんな二人の会話に「そうですね」と小さく答えておいた。

揺れる車、雑音がひどく会話なんてそこそこ。

しばらく走ると雨が落ちてきた。

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