重なる身体と歪んだ恋情
車の雑音と雨の音が混じる。

夜と言うのもあるのだけど会話も自然となくなって。

そんな中で私の考えることはとてもくだらないこと。


彼が私にキスしてくれたのは結婚式のときだけ。


なんて。

政略結婚なのだから仕方ないのに。

ううん、政略ですらない。

私はこの身体に流れる血を買われただけに過ぎない。

でもだったら……。


ちらっと隣を見ると奏さんは窓にもたれるようにして目を閉じていて。

私の旦那様。

だからといって私たちの間に夫婦らしいことは何も無い。

子を産むことだけが私の存在価値だと思っていたのに、それすらいらないのかしら?

こうしてお人形のように連れ歩くことが目的だったの?


「……あ」


思わず漏れた声は誰にも聞こえなかったと思う。

右手をそっと口元に当ててもう一度奏さんを見た。


シャツの首元に赤い口紅。


私の居ない間に一体どんなダンスを踊ったのか。

それを考えるだけで吐き気がした。
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