重なる身体と歪んだ恋情
子供。

そういいたいのでしょう?

でも、そんな子供を妻にと望んだのはあなたのはずだわ。


「もしかして気分を害してしまいましたか?」

「……いえ」


子供にも小さいながら矜持と言うものがあるんです。


「機嫌を直して。そうだ、彼女にクッキーをお持ちして。確かイギリスから――」

「機嫌は悪くないですし、クッキーも結構ですから」


私はそう言って残ったコーヒーを飲み干した。


「無理はなさらないで」

「してません」

「コーヒーは疲れを取るのに最適な飲み物らしいですよ?」

「はい?」


繋がらない会話にまた隣を見上げれば、彼は優雅にカップに口付ける。


「パーティで気疲れしたでしょからあなたにもと思ったのですが」

「……」


彼はそう言ってカップをテーブルに置くとスッと立ち上がった。

今更だけど、真っ白なタキシードはどうしたのか。

彼は深い灰色地に細いストライプの入ったスーツを着て、私の前を歩き始める。


「コーヒーが苦手でしたら如月なり小雪に言いつけて。次からは他の飲み物を用意させましょう。それから――」


コツンコツンと彼の靴が床を鳴らす。


「私は今から仕事に戻ります。夜も遅くなりますから先にお休みください」

「……え? あ、はい」


どういう意味?

混乱する私を彼はクスリと笑って、


「それでは千紗さん、おやすみなさい」


まるで他人のような挨拶を口にして彼はこの部屋から出て行った。
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