重なる身体と歪んだ恋情
小雪の声に奏さんと如月も私を見つけてしまって。


「あの、喉が渇いてしまって……」


何とかそう言うと階段下から、


「なにか寝つきのよいものをご用意いたします」


如月がそう言って軽く頭を下げた。すると、


「あぁ、それなら私も貰おう」


奏さんまでそう言って居間に入ってしまって。そうなると私も降りないわけには行かなくて階段を下りはじめた。

居間に入ると既に奏さんはタイを緩めてソファに座って。

思わず見てしまったのは首元。

けれど今夜は赤い痕は見えず思わずホッとしてしまった。

そんな私を不審に思ったのか、


「どうかしましたか?」


と。その声には「いいえ」と答え彼の隣へ座る。

不意に香ったのは薔薇のような香水の残り香で。

よく見ればシャツのエリにおしろいのようなものも。

それ以上は見たくなくてフイッと顔を逸らした。


「千紗さん?」


その口で私の名前を呼ばないで。


「……なんでも、無いですから」

「本当に? 顔色がよくありませんよ」


こんな状況でもニコニコ笑って無いといけないの?

私の頬に伸びてくる手が見えて――、


「触らないで!」


思わずその手を叩いてしまった。

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