重なる身体と歪んだ恋情
乾いた音にハッとしたけれどもう既に遅くて。

目の前の奏さんの綺麗な顔が不快に歪む。


「……なんです?」


そして低い声に私は座ったまま彼から少し距離を取った。


「ご、ごめんなさいっ」

「それでは意味が分かりませんよ」


そんなの、私も分からない。

どうして私を形だけの妻として迎えたの?

公家の血筋が欲しいなら早く子供を産ませればいい。

その役目を終えたなら捨てたって構わない。

私以外の女性とはそういった行為をしているくせに。

なのに、彼は私には何もしない。

何も――。


「千紗さ」

「まだ少し寝ぼけておいででは?」


その声に視線を向ければポットを用意した如月がいて。


「ハーブティーを入れました。よく眠れると思いますよ」


そう言ってカップに注いでくれる。


「奏様もどうぞ」


カチャリと彼の前に置かれるカップ。だけれど、


「もういい。弥生、寝ますから」


奏さんは口をつけることなく居間から出て行った。
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