重なる身体と歪んだ恋情
平日は彼と顔を合わすことがなくとも、週末にはどうしても顔を合わせないといけない。

それ以上に、手を彼の腕に絡ませて隣を歩かないといけないだなんて。

けれど私に拒否権なんてあるはずも無く、今夜も晩餐会に足を運ぶ。

いつもと同じように笑顔を作って挨拶をして。

それが一通り終われば、


「……はぁ」


私は隠れるようにバルコニーに出た。

外は雨だから誰も居ないバルコニー。だからこそ落ち着くと言うもの。

料理も飲み物も、ダンスにも興味は無い。

だからここで終わるのを待つのが当たり前になってしまって。

お開きの頃を見計らって会場に戻れば、


「千紗さん、どこにいらしたのですか? 探しましたよ」


彼は探してもいないのにそう言って笑顔で私に近づいてくる。

きっとここにいるのは知っているのだと思う。


「すみません、お酒に酔ってしまって」


これもいつもの台詞。

そしてまた腕を絡ませて会場を後にする。

彼に染み付いた香水に顔を歪めながら。
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