重なる身体と歪んだ恋情
今夜は日本人の方で何かのお祝いだといっていた気がする。だから、


「おめでとうございます」


と笑顔で挨拶を。その後も会場にいるすべての人と挨拶を交わして。


「本当にすごい雨ですね」

「でも雷も鳴っているしきっとこれで梅雨明けですよ」


そんな会話を繰り返す。

本当に退屈。

だからと言うわけでは無いけれど私は始終会場を見回していた。

もしかしたら、なんて淡い期待を胸に抱いて。

けれど一周しても先生の姿は見えなくて。


「疲れたようですね。少し休んでいるといい」


思わず口から出たため息に彼は私が疲れたのだと解釈したらしい。

実際、疲れているのだから丁度いい。

だから彼から渡されるシャンパングラスを手にして勧められるまま廊下に用意されてる椅子に腰掛けた。


「私はまだ少し話がありますのでここで待っていてください」


その声にも素直に頷いて会場に戻る彼の背中を見送って、手にしたグラスに口をつけた。

馬鹿みたい。

先生だってこういう会に出るのは仕事で遊びではないと言うのに――。

コクリと飲み込んでまたため息が零れそうになって、


「桜井さん」

「――っ!?」


その声に心臓が止まりそうになった。
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