重なる身体と歪んだ恋情
流れていく涙に彼は口付ける。

この涙は何のためなの?

身体の痛みか、心の痛みか、

それとも快楽による生理的なものなのか。

分からないけれど、私の体は何度も揺すぶられて。


「――っ」


彼が私の中にすべてを吐き出して、終わった。

お互いの荒い息が鼓膜を震わせる。

シュルリと解かれたのは手首にあったリボン。

途端に手首はジンジンと痛みを訴えて。

それ以上に、身体が悲鳴を上げてる。

身体がバラバラになったみたいに感覚は鈍いけれど。


「可哀想に……」


そう言って彼は私の手首に口付けを。


「でも消毒は後にしましょう」


ペロリと舐められる痛みに顔が歪む。


「だって、夜はまだ長いのですから」


月夜に浮かぶ彼の笑みは悪魔と思えるほどに美しくて、彼が与える快楽に意識を落としそうになって。

そして刻まれる痛みに呼び戻される。

何度も、何度も。



それを何度繰り返したのだろう?

< 263 / 396 >

この作品をシェア

pagetop