重なる身体と歪んだ恋情
目が覚めたとき、私は自分の部屋にいた。

ベッドに横たわった状態で。

瞼をあければ眩しいくらいの日の光が。

明るさからもうお昼近くかもしれない。

どうして如月は起こしに来ないのかしら?

そんなことを思いながら体と起こそうとしたのに、


「……ぁ」


身体中が気だるい。

そして身体の中心で感じる痛み。

その痛みに声が漏れたけれどかすれてしまって。

……だから、如月は起こしに来なかったのね。

きっと屋敷中の人間が知ってる。

昨日の夜、私がどうなったのかなんて。

夫婦だから当たり前、なんてものじゃない。

あれが夫婦の営みだなんてあり得ない。

彼は私を娼婦だとすら思っていない。

ただの愛玩具(おもちゃ)。

飾って楽しんで壊して笑ってる。


「痛っ」


無理やり体を起こそうとして手首の痛みに声を上げてしまった。

既に包帯は巻かれて消毒はしてあるみたい。

彼が?

ううん、あり得ない。

きっと弥生か小雪で、こんな私の姿を彼女達に彼は平気でさらしたのだと思ったら悔しくて情けなくて、唇を噛み締めた。

身体の芯に力を入れて状態を起こす。

すると私の中からドロリと流れ出てくる感覚に背筋が凍った。

見れば私はガウンを羽織っている状態で、だけどこれは私には大きめで。

多分、彼のものなのだろう。

そしてそっと流れ出たものを確かめた。


「――ひっ」


飛び出そうな声を抑えるよう両手で口を覆う。

真っ白なシーツに流れ出たのは、


白濁した体液と、

それに混じる赤い私の血――。

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