重なる身体と歪んだ恋情

「貴女一人くらい片手で支えられます」


そう言いながら彼は傍にあるカーテンを引っ張って外していく。


「だから貴女が先に下りるんです」

「だ、だって、そんなことをしたら奏さんはっ」

「大丈夫、貴女を無事降ろした後に私も降りますから」


そして裂かれていくカーテン。

それをいくつも作って結んで。


「――手伝います!」


私の声にフッと笑う奏さん。

まずは彼の右手。

部屋においてあったハンカチでその手を覆った。それでも不自由さは変わらないだろうけど。


「ありがとう」

「いえ……」


首を振る私に彼はチャラッとペンダントを差し出す。


「もう熱くないから」

「……」


それを手のひらで受け取ると彼の言うとおり熱くはなくて、


「ありがとうございます」


今度は私がお礼を言った。

それから彼の裂いたカーテンを手にして、


「そうじゃない。固く結ぶにはこうして……」


彼に言われるまま結んでいく。


「海ではこの結び方が当たり前なんです。覚えておくといいですよ」


なんて。

こんな状況なのに笑みを浮かべてる彼がとても不思議で。


「さあ時間がありません。これを窓の柱にくくりつけてあなたを降ろしますよ」


そう彼が口にしたとき、


「きゃあ!」


ドアが火の勢いに負けて焼け落ちてしまった。


「早く!」

「は、はいっ!」


彼の右手には私のまいたハンカチが見えて。

その手のまま彼は窓の柱にカーテンをくくる。

そして私の体にも。


「いいですか? 落ち着いて」


その声にコクリと頷くと私の身体は窓枠に乗せられて。


「ひっ」


そこから下を見れば目のくらむような高さだった。


「大丈夫、下に如月がいます」

「……」

「絶対に大丈夫ですよ」


そう言って彼の手が私の髪をそっと撫でる。


「さあ、行って!」

「きゃあ!!」


落とされると思った私の体にはしっかりとカーテンが巻きついていて。


「ゆっくりと降ろします! 司っ!」

「大丈夫だ! この下にはまだ火が回っていない!」


如月の言うとおり私の部屋の下、大広間にはものがすくないせいか火は窓まで来ていなくて。


「千紗様っ!」


私の身体は如月の腕の中に無事下りることが出来た。

如月はすぐさまカーテンを私から解いて抱き上げる。


「奏っ!」


見上げて彼の名前を呼ぶ。


「早く安全なところへ。私もすぐに――」


そう言った瞬間、


「え?」


真っ黒な煙が奏さんの笑顔を消していく。

そして、


「きゃあ!!!!」


炎が彼を包んだ。
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