重なる身体と歪んだ恋情
私の声を理解していないのか、千紗は強張らせた表情のまま首を僅かに傾ける。


「あぁ、だからといってここでは困りますね。ベッドまでは歩きましょうか」

「――ぁ」


ここまで言うと理解したのか、彼女は私から離れるように身体を引いた。

そして落とされる視線、俯くと髪が揺れて彼女の顔を隠す。

自分の中で『ほら、見ろ』ともう一人の自分があざ笑っている。

本当に、私は何を彼女に期待しているのか。

自分の浅はかさに自嘲したくなる。


「冗談で」

「立てますか?」

「え?」


驚く私の隣でスッと立ち上がる千紗。そして、


「……」

「どうぞ」


呆然と見上げる私に彼女は手を差し伸べた。

ゆっくりとその手を取ると頼りない力で私を引き上げる。

立ち上がってしまうと当然私の方が背は高く、俯く彼女の顔は見えない。

先ほど見上げたとき、彼女はどんな表情をしてた?

なぜ覚えて無いのだろう?

一歩、足を踏み出す彼女にあわせ私も足を動かす。

そして明りついていない寝室のドアを、千紗が開けた。

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