重なる身体と歪んだ恋情
どのくらい眠っていたのか。

目が覚めたときはもう真っ暗で夜になっていた。

途中スズがお夕飯を運んでくれたがそれも口に出来ず、少しだけのお茶を飲んだだけ。

だからお腹はすいたのだけど、食べたいと思えるほど気分は良くなってはいない。

本当に、どうしたのかしら?

重たい頭をもたげてベッドを降りる。

もう夜も遅いのだろう。

屋敷の中で誰かが動く音はどこからもしなかった。

お水を飲んで小さく息を吐く。

何時かは分からないけど、庭に車はなく奏さんはまだ帰ってないみたい。

もしかしたら、今夜は帰ってこないのかしら?

そうだとしたら、彼はどこで寝るの――?

そんな考えにフルフルと頭を振って、私はまたベッドに戻った。

足は、もうほとんど治ってる。

この家にしたって、彼の帰りたい家ではないのも分かってる。


『彼が大切にしてるのはね、新橋の葛城――』


なぜだか分からない。

分からないけど、八重さんの言葉がふと脳裏をよぎった。


◇


その日の夜、彼は結局帰ることは無く彼の顔を見たのは翌日の夜だった。


「気分が優れないそうで。大丈夫ですか?」

「もう大丈夫です。何でもありませんから」


そう言って笑ってみせる。


「熱は?」

「――っ?!」


彼の手が私の額に触れる。

その動作にも驚いた。

けれどそれ以上に外から帰ってきたばかりで冷たい手に、

そして、彼からかすかに白檀の香りに――。


「千紗さん?」

「なっ、なんでもっ、あのやはり気分が優れませんので先にお休みさせてもらいます」


そう告げて自分の部屋に戻りベッドにもぐりこんだ。

きっと、彼は変に思ったかもしれない。

私自身、自分が分からない。

全部分かっていたことなのに。

ちゃんと理解してるつもりだったのに。

彼のことなんて、愛してなんかいないのに――。
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