重なる身体と歪んだ恋情
どのくらい眠っていたのか。

目が覚めたときはもう真っ暗で夜になっていた。

途中スズがお夕飯を運んでくれたがそれも口に出来ず、少しだけのお茶を飲んだだけ。

だからお腹はすいたのだけど、食べたいと思えるほど気分は良くなってはいない。

本当に、どうしたのかしら?

重たい頭をもたげてベッドを降りる。

もう夜も遅いのだろう。

屋敷の中で誰かが動く音はどこからもしなかった。

お水を飲んで小さく息を吐く。

何時かは分からないけど、庭に車はなく奏さんはまだ帰ってないみたい。

もしかしたら、今夜は帰ってこないのかしら?

そうだとしたら、彼はどこで寝るの――?

そんな考えにフルフルと頭を振って、私はまたベッドに戻った。

足は、もうほとんど治ってる。

この家にしたって、彼の帰りたい家ではないのも分かってる。


『彼が大切にしてるのはね、新橋の葛城――』


なぜだか分からない。

分からないけど、八重さんの言葉がふと脳裏をよぎった。





その日の夜、彼は結局帰ることは無く彼の顔を見たのは翌日の夜だった。


「気分が優れないそうで。大丈夫ですか?」

「もう大丈夫です。何でもありませんから」


そう言って笑ってみせる。


「熱は?」

「――っ?!」


彼の手が私の額に触れる。

その動作にも驚いた。

けれどそれ以上に外から帰ってきたばかりで冷たい手に、

そして、彼からかすかに白檀の香りに――。


「千紗さん?」

「なっ、なんでもっ、あのやはり気分が優れませんので先にお休みさせてもらいます」


そう告げて自分の部屋に戻りベッドにもぐりこんだ。

きっと、彼は変に思ったかもしれない。

私自身、自分が分からない。

全部分かっていたことなのに。

ちゃんと理解してるつもりだったのに。

彼のことなんて、愛してなんかいないのに――。
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