重なる身体と歪んだ恋情
馬車を乗り継いで新橋へ向かう。
『新橋の葛城』
これだけで探せるのか心配はあったけど、なんとなく見つけられる気がした。
根拠なんてものはない。
だから新橋に着いてもどっちへ歩けば良いのかすら分からない。
そもそも家の名前なのかお店の名前なのかも分からない。
誰かに『葛城』の名前を出したら分かるのだろうか?
悩んでる間にも通り過ぎてく人たち。
誰か――。
「あの……」
「はい」
小さな私の声に反応してくれたのは、紬の着物を着た女性だった。
色っぽくお化粧も控えめ。
「何か?」
何より、そう聞く声が優しく感じた。
「すみません、このあたりで葛城様という方をご存知ありませんか?」
人なのか店なのか、分からないけれどそう尋ねると彼女は驚いたように目を見開いた。
「葛城? 私の店をお探しで?」
「え?」
お店?
葛城はお店の名前だったの?
「どのようなご用件でしょうか?」
ニコリと目の前で微笑む彼女。
後れ毛をそっと右手で整える仕草も艶っぽい。
そして袖が風に揺れたとき、彼女の香りも一緒に揺れた。
白檀の香り。
彼女だ。
無条件でそう思った。
「……私、桐生奏の、妻です」
『妻』という言葉を口にするのも危うい関係だけれど、私の言葉に彼女は大きく目を見開いて、それからまたニコリと笑った。
「まぁ、そうでしたか。桐生様にはいつもお世話になっております」
「……いえ、こちらこそ」
こんなとき、どう答えればいいのか。
そしてこれからのことをどう切り出せばいいのか。
次の言葉が出せずに困っていると、
「こんなところではなんですので、うちへお越しくださいませ」
「さあ」と言われて、私は彼女の後ろをゆっくりと歩き出した。
『新橋の葛城』
これだけで探せるのか心配はあったけど、なんとなく見つけられる気がした。
根拠なんてものはない。
だから新橋に着いてもどっちへ歩けば良いのかすら分からない。
そもそも家の名前なのかお店の名前なのかも分からない。
誰かに『葛城』の名前を出したら分かるのだろうか?
悩んでる間にも通り過ぎてく人たち。
誰か――。
「あの……」
「はい」
小さな私の声に反応してくれたのは、紬の着物を着た女性だった。
色っぽくお化粧も控えめ。
「何か?」
何より、そう聞く声が優しく感じた。
「すみません、このあたりで葛城様という方をご存知ありませんか?」
人なのか店なのか、分からないけれどそう尋ねると彼女は驚いたように目を見開いた。
「葛城? 私の店をお探しで?」
「え?」
お店?
葛城はお店の名前だったの?
「どのようなご用件でしょうか?」
ニコリと目の前で微笑む彼女。
後れ毛をそっと右手で整える仕草も艶っぽい。
そして袖が風に揺れたとき、彼女の香りも一緒に揺れた。
白檀の香り。
彼女だ。
無条件でそう思った。
「……私、桐生奏の、妻です」
『妻』という言葉を口にするのも危うい関係だけれど、私の言葉に彼女は大きく目を見開いて、それからまたニコリと笑った。
「まぁ、そうでしたか。桐生様にはいつもお世話になっております」
「……いえ、こちらこそ」
こんなとき、どう答えればいいのか。
そしてこれからのことをどう切り出せばいいのか。
次の言葉が出せずに困っていると、
「こんなところではなんですので、うちへお越しくださいませ」
「さあ」と言われて、私は彼女の後ろをゆっくりと歩き出した。