ファーストラブ
来ればきっと、俺の中学もこんなふうだったといって、椅子に座ったり黒板に落書きしたりするのだろう。
何気なく笑って、職員室に行こうと決めた。
帰る前に、先生に挨拶しておかなきゃ。

私は教室の扉を開けた――つもりだった。
いやに軽く、扉が開いた。

「……びっくりした」

男性の声がした。
懐かしい。担任の先生。

「すいません、勝手にお邪魔していました。今、ご挨拶に職員室に伺おうと……」

「二宮?」

驚いた担任の声が、私の名を呼んだ。

「覚えていてくれていたんですね」

私の心が、ふわりと暖かく満たされた気がした。

「当たり前だ」

「私が、バレンタインチョコ渡したのも?」

「そんなこともあったな」
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