魔王と王女の物語③-Boy meets girl-【完】
本気でやらなければこちらがやられてしまうかもしれない――

魔界では向かう所敵なしと言われていたゼブルにそう思わせてしまうほどの異常事態が起きていた。

一歩前進してきたデスに向かって腕を振り下ろすと、真っ黒な刃のような光がデスに襲いかかる。

この刃に触れてしまえば身体など一刀両断されるほどに鋭くこれを向けられた相手は悉くゼブルの微笑を最期に見て死んでいったが――


デスは半歩下がってそれを避けると、真っ白な死神の山を振りかざして風の刃を生み出す。

それはゼブルの攻撃よりも早く、当時に大地を蹴って眼前に急襲してきたデスは驚愕で無防備状態のゼブルの胸に掌をあてて力をこめた。


「ぐ、ぅ…っ!」


大きな衝撃を受けて胸が圧迫されて大量の吐血をしたゼブルは、あの小娘を攫ったことでとんでもない敵を作ってしまったことに舌打ちをして口元を拭った。

それまでの優雅な振る舞いを続けることもできず、心臓に茨を巻き付けられたかのように痛む胸を押さえながら空中へと逃げ出した。


「まさかお前が愛を覚えるとはな…。それもコハク様の女を!ふふっ、傑作だ!殺されるのは俺ではなくてお前の方だな…!」


「……魔王…知ってる…。……俺は……ラス…大切……」


「なに…?それでもコハク様が…お前をお傍に置いていると…!?」


以前のコハクなら有り得ない。

気に入らない者は問答無用で殺すし、興味本位でデスと親しくしているのは知っていたがいっときのことと割り切って耐えていたのに――

嫉妬の炎に身を焼かれたゼブルは、空中から腐った土の大地に掌をかざして異形の者を呼び出す。


「出でよ、不浄の者たち!死神を仲間にして引きずり込むがいい!」


ゼブルを見上げていたデスの足元の土がぼこぼこと動くと、骨が見える手が突き出てきた。

現れたのはゾンビの集団で、大した力はないがしつこく向かってくるので倒すのに時間がかかってしまう。


「あの女の居所など教えるものか!げほ…っ!」


また吐血をしつつもふっと姿を消してしまったゼブル。

無表情で死神の鎌を握り直したデスは、その後黙々とゾンビを狩った後、再びゼブルを追いかけた。
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