魔王と王女の物語③-Boy meets girl-【完】
ラスが真っ白なウサギを膝に乗せてコハクが何を話すのかわくわくしながら見上げていると、コハクはラスの傍で中腰になってラスに向かって前のめりになり、にやりと笑った。


「この動物たちをグリーンリバーに住まわせてやるんだ。動物園じゃなくて、こいつらは自由に動き回れて、人は自由にこいつらを触れる。な、いいだろ?」


「え…!嬉しいけど…でもあの山に戻らなくていいの?」


『いいんだよ、あそこに居れば安全だけど楽しくないし…僕たちはお嬢さんが大好きなんだ。ここに居ればいつでも会えるでしょ?それとも…戻った方がいい?』


ウサギの長い耳がしゅんと垂れたので、慌てたラスは手でふかふかの耳を持って立てると、ぶんぶん首を振った。


「ううん、嬉しい!コー、ありがとう!すごく嬉しいっ」


動物たちに負けない程きらきらした瞳で見上げられてきゅんきゅんむらむらした色ぼけ魔王は、動物たちを押しのけてラスを抱っこして顔中にキスをした。


――コハクはラスが元気になるようにと、あの磁場の狂った山まで行って彼らを説得して戻って来たのだ。

ラスはリングの効果で彼らと話すことができるが、普通の人はできない。

だがラスを助けてくれた恩人たちであり、弱肉強食の世界で命を脅かしながらも生きている彼らへのせめてもの礼にと話をすると快諾してくれたのでここへ連れて来た。

住人も観光客たちも喜ぶだろうし、何より――ラスが1番喜んでくれると確信していた。


「寝床はうちの庭にすっから、夜になるとこんもりした動物の山を見れるぜ。ルゥの情操教育にもなるだろ」


「うん!ここは川が沢山あるから水鳥さんたちも住みやすいと思うし、コーが改造した魔物さんたちもお世話してくれると思うし私もするから!ここに来てくれてありがとう」


笑顔満面のラスに手を振られてでれでれした動物たちは、改造済みの魔物たちに抱っこされて街へと連れて行かれる。


デスが肩に乗ったまま離れない小さくて黄色いひよこを撫でていると、屋上にグラースがやって来た。


「あ、グラース!今まで会いに行けなくてごめんね、私もう元気になったよ」


「それは良かった。お前に元気がないと街もそこの魔王も私たちも元気がなくなるからな」


「……?グラース…どうしたの?そんな格好してるのはじめて見たかも…」


いつも白騎士の鎧を身につけているグラースはゆったりとした巻きスカート姿。

ラスの首が傾くと、グラースは妖艶な笑みを浮かべて口を開いた。
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