魔王と王女の物語③-Boy meets girl-【完】
引きこもりがちのアーシェは、食事時のみに現れる。

目の下にはくまができているし、明らかに痩せた感じがするのでラスが心配してせっせと食事や飲み物を運ぶ度に魔王の頬は風船のようの膨らんでしまう。


「チビさあ、ちっとアーシェに構いすぎじゃね?」


「でも…なんか一生懸命作ってるし。私たちがアーシェを村から連れ出したんだし、できることはしてやりたくって。それに…」


まだ全然目立ってない腹を撫でつつ一旦言葉を切ったラスは、焼きたてのパンとオレンジジュースの乗ったトレイをコハクの手に押しつけてにこっと笑った。


「コーがやつれるように見えちゃって放っておけないからお世話してあげたいの。駄目?」


「…チビ!俺キュン死しそう!」


ラスを撫でくり回してアーシェの作業部屋に向かおうとすると、歩く度にきゅっきゅと音が鳴る靴を履いたルゥが一生懸命ルゥなりの早足でついて来る。

再び盛大なきゅんが胸から鳴ったコハクは、超スローペースで廊下を歩いて階段を降りると、一大名観光スポットとなった広場の公園のことをラスに話した。


「チビがモデルになった例の女神像な、あれが呼び水になって観光客がまた一気に増えたんだ。移住したいっていう要望も多いし、クリスタルパレスかぐりーんリバーかって悩んでる連中が多いらしいぜ」


「ふうん、そうなんだ。ねえコー、ティアラたち遅いね。お散歩まだ終わらないのかな。お話沢山したいのに」


「あー、あいつらは…まあ…いいじゃん、放っとけよ。チビがボインの悩みを聞いてやったんだろ?俺も小僧から聞いたけど、たぶん同じ悩みなのな」


「そうなの?赤ちゃんが欲しいって言ってた?私ね、リロイを襲っちゃえってアドバイスしたの。…まさか…今頃…きゃっ」


「ま、そうゆうこと。小僧は意外と押しに弱いからさ、今頃…うらやま……間違えた。俺だって今夜!」


「アーシェ、お腹空いたでしょ?パン焼いて来たよ」


今夜のお誘いをかけようと思っていたのに見事スルーされたコハクは、また風船のように頬を膨らませつつも、パンツの裾を握ってへらっと笑いながら見上げてきているルゥを抱っこしてドアを開けた。


「わあ…」


部屋中には作りかけの彫像やアクセサリー類が所狭しとテーブルや棚に並べられている。

アーシェの創造力は無限大だった。
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