魔王と王女の物語③-Boy meets girl-【完】
全く同じ顔、同じ格好をした自分が目の前に立っている――

リロイは絶句して片手で口元を覆うと微笑を浮かべているもうひとりの自分をあらゆる角度から見て驚いた。


「これは…僕じゃないか…!魔王、これは一体…」


「お前と同じ能力、同じ性格、同じ姿のお人形さんだぞー。おいボイン、この人形つかってイタズラしてもいいんだぜ」


「!ば、馬鹿なこと言わないで!でも…すごいわ、本当にそっくり…」


「はじめましてティアラ。あなたの夫のリロイです」


恭しく片膝を折って目を丸くしているティアラの手の甲にキスをしたもうひとりのリロイの行動も、本人そのものだ。

ティアラはともかくラスもなんだか頬を赤らめてもじもじしているので、いらっとしたコハクは人形の方のリロイを足蹴りして本物のリロイに詰め寄った。


「おいてめえ、俺の天使ちゃんがきゅんってしてるじゃねえかよ。責任取れ!」


「僕は関係ない!それに…これをどうする気なんだ?もうひとり居たって何の解決にも…」


「これをここに置いていったらお前も旅に出れるだろ?つまりそうゆうことー」


…まさかコハクが気遣ってくれるとは夢にも思っていなかったリロイは、真っ青な瞳でコハクを凝視して真意を探る。


コハクはラス至上主義だ。

ラスのためならどんなことでもするし、妖精の森に一緒に旅に出るということは…ラスが自分も誘ってくれているのだろうか。


「僕も…一緒に旅を?」


「うん、そうだよ。ねえリロイ、またみんなで旅をしようよ。このお人形さんがリロイの代わりにお仕事してくれるのならリロイも旅に出れるでしょ?コー、そういうことだよね?」


「そうゆうことー。それにお前が断ったら旅の道中の間俺がボインに何かするかもなー」


「!ふざけるな!ティアラに何かしたら絶対許さないからな!」


――そこでまたティアラだけではなくラスもぽっとなってしまったので、魔王、さらに憤慨。


「あーあ、やっぱお前連れてくのやめよっかなー!喧嘩ばっかしそうだしなー!」


「コー、喧嘩は駄目。みんなで楽しく旅に出ようよ。ね、リロイ。一緒に行こ?」


元主人のラスに懇願されるととことん弱いリロイは、壁にもたれかかって笑っているグラースや、ラスと同じ表情で懇願してくるティアラの頼みを断りきれず、肩を竦めた。

身体が鈍っているのは事実だし、恐らく魔物の襲撃にも遭うこともあるかもしれない。


何よりコハクが超危険人物なので、そんな男にティアラを任せるわけにもいかない。


「…わかった。僕も行く」


旅の仲間が、揃う。
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