魔王と王女の物語③-Boy meets girl-【完】
以前ティアラに貰った白いショルダーバッグに黒いお財布を入れ、水色のベビーカーにルゥを乗せて出発の準備を整えたラスは、気合十分だった。
「私はじめてお買い物するんだよ。コーのとルゥのお洋服とか買ってあげるね」
「あうあうあー」
強国ゴールドストーン王国の王女だったラスは、買い物をしたことがない。
買わなくてもクローゼットにはいつもドレスが詰まっていたし、アクセサリーや下着なども全て、気が付けば新しく新調されていたりしていたので、そんな生活が普通だったのだ。
だがもう王女ではないし、コハクから託されたお財布を手にひとりで買い物を済まさなければならない。
どきどきしながら部屋を出ると、すぐさまエプロン姿の魔物が駆け寄って来て、ルゥが乗ったままのベビーカーを担いで階段を降りてくれた。
「魔王様はご一緒じゃないんですか?」
「うん、今日はひとりでお買い物に行って来るの。お金が足りなかったらどうしよう」
若干不安が拭いきれないラスがショルダーバッグからお財布を見せると、オレンジのカラフルな鳥頭をした魔物は玄関の前でベビーカーを下ろして親指を立てた。
「それだけあれば十分ですよ。途中で魔王様にお会いできるといいですね」
ここの魔物は全員が優しく接してくれる。
かつてコハクが彼らを捕まえて改造して“悪”の部分を取り除いて良い魔物になった彼らは、今やこの街の名物になっている。
「じゃあ行ってきまーす」
ぽかぽかな日差しが気持ちよくて、やわらかい日差しが降り注ぐ中、ラスはベビーカーを押していくつかの橋を渡り、繁華街へとやって来た。
ここにはこの街1番おしゃれと言われている服屋があり、いつも観光客たちでにぎわっている有名な店だ。
ショーウィンドウにはカラフルなビキニの水着を着たマネキンが立っていて、こういう格好をしたことのないラスはつい立ち止まって食い入るように見つめてしまった。
「こんなの着て海で泳いでみたいな。ルゥも一緒に泳ごっか」
「あうー」
…ラスは気付いていなかったのだが…
ラスが店に現れた途端、ほとんどの客たちが一斉にラスを見て息を呑んでいた。
まだ20にも満たない年齢で不死の魔法をかけられたラスは老いることなく美しく瑞々しいままだ。
世界一美しい王女としても有名だったので、その王女がグリーンリバーの統治者に嫁いだことも広く知られており、たちまちハチの巣をつついたような騒ぎになった。
「ルゥちゃん、なんか騒がしくなってきたね。どうしたのかな」
相変わらずど天然なラスは呑気にそう言ってルゥを抱っこした。
「私はじめてお買い物するんだよ。コーのとルゥのお洋服とか買ってあげるね」
「あうあうあー」
強国ゴールドストーン王国の王女だったラスは、買い物をしたことがない。
買わなくてもクローゼットにはいつもドレスが詰まっていたし、アクセサリーや下着なども全て、気が付けば新しく新調されていたりしていたので、そんな生活が普通だったのだ。
だがもう王女ではないし、コハクから託されたお財布を手にひとりで買い物を済まさなければならない。
どきどきしながら部屋を出ると、すぐさまエプロン姿の魔物が駆け寄って来て、ルゥが乗ったままのベビーカーを担いで階段を降りてくれた。
「魔王様はご一緒じゃないんですか?」
「うん、今日はひとりでお買い物に行って来るの。お金が足りなかったらどうしよう」
若干不安が拭いきれないラスがショルダーバッグからお財布を見せると、オレンジのカラフルな鳥頭をした魔物は玄関の前でベビーカーを下ろして親指を立てた。
「それだけあれば十分ですよ。途中で魔王様にお会いできるといいですね」
ここの魔物は全員が優しく接してくれる。
かつてコハクが彼らを捕まえて改造して“悪”の部分を取り除いて良い魔物になった彼らは、今やこの街の名物になっている。
「じゃあ行ってきまーす」
ぽかぽかな日差しが気持ちよくて、やわらかい日差しが降り注ぐ中、ラスはベビーカーを押していくつかの橋を渡り、繁華街へとやって来た。
ここにはこの街1番おしゃれと言われている服屋があり、いつも観光客たちでにぎわっている有名な店だ。
ショーウィンドウにはカラフルなビキニの水着を着たマネキンが立っていて、こういう格好をしたことのないラスはつい立ち止まって食い入るように見つめてしまった。
「こんなの着て海で泳いでみたいな。ルゥも一緒に泳ごっか」
「あうー」
…ラスは気付いていなかったのだが…
ラスが店に現れた途端、ほとんどの客たちが一斉にラスを見て息を呑んでいた。
まだ20にも満たない年齢で不死の魔法をかけられたラスは老いることなく美しく瑞々しいままだ。
世界一美しい王女としても有名だったので、その王女がグリーンリバーの統治者に嫁いだことも広く知られており、たちまちハチの巣をつついたような騒ぎになった。
「ルゥちゃん、なんか騒がしくなってきたね。どうしたのかな」
相変わらずど天然なラスは呑気にそう言ってルゥを抱っこした。