魔王と王女の物語③-Boy meets girl-【完】
質素ではあるが美味しい食事を頂いたラスは、コハクと一緒に暖炉の前であたたまった後ベッドに入った。

オーナーから夜はかなり冷え込むので暖炉の炎は消さないようにと言われていたため、夜でも暖炉の炎は入れたままで、時々炎が爆ぜる音が心地いい。

コハクとしては魔法で部屋をあたためることもできたのだが――敢えてそうしないのは、体温でラスをあたためてあげたかったから。

ラスが潰れてしまいそうな位にぎゅうっと抱きしめているとものすごく落ち着くので、ラスには悪いが朝まで片時も離さずに眠った。


「コー、コーったら朝だよ。お腹空いちゃった。ねえ起きて」


「んー……もうちょっと…」


抱きしめて離してくれないので、なんとか手を伸ばしてベッドサイドに置いていた愛用の白いショルダーバッグを引き寄せたラスは、その中から小さな缶に入れた金色の蜂蜜で作ったキャンディを取り出して口に入れると、幸せな気分になってまたコハクの腕の中に戻った。


「チビ…?なに食ってんだよ…俺にもちょーだい…」


「キャンディだよ?分けてあげたいけどどうすれば…噛めばいいのかな」


「こうすりゃいいじゃん」


「え?………ん…っ」


寝ぼけながらラスの唇をいきなり奪ったコハクは、舌を伸ばしてキャンディを絡めると、がりっと噛んで半分にしてラスの口の中に戻した。

豊潤で濃厚に甘いキャンディの味でようやく覚醒したコハクは、ラスの顔が真っ赤になっていることに気付いてやわらかい頬を小さく引っ張った。


「ほっぺ赤いぞ。なんだよ、どした?」


「なんでもないもんっ。コー、お腹空いたの。ご飯食べたら外に出ようよ。今日こそあちこち見て回るの。何か買ってくれるんでしょ?」


「なんでも買ってやるよ。ここはさあ、すげえ有名な彫刻家が居るらしいんだ。もし俺の趣味に合ってたらグリーンリバーに飾ってやってもいいな」


「わあ、楽しみ!コー、早くご飯!早く着替え!あ、その前にもう1回お風呂に入ろうかな…その前にルゥちゃん!ルゥちゃーん、お乳あげるからね」


忙しなく動き回るラスを見ているだけで楽しい。

ルゥを抱っこして高い高いをしてやっているラスは母になってさらに美しくなり、そしてこのまま老いることもなく生きてゆく。

その選択をしてくれたラスを今後絶対悲しませないと決めたのだから、ラスが嫌がる殺しだって平気でやってみせる。

この手が再び血に染まっても――
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