魔王と王女の物語③-Boy meets girl-【完】
高山と言えど観光客は多い。

そのほとんどがコハクたちと同様に工芸品を求める観光客たちなので、ホルンの住人のほとんどが工芸品の販売を生業としている者たちだった。

宿屋のオーナーたちからは相変わらずじろじろ見られてあまりいい気分ではなかったが、ラスがそんな対応されることにもう慣れてしまったらしく、コハクにルゥを抱っこさせるとログハウスから飛び出して行く。


「あ、ちょっと待てってチビ!足元が雪で凍ってるから滑るぞ!俺の腕に掴まってた方がいいと思うなー!そうした方が俺も嬉しいなー!」


「うん、わかった。コー、広場のバザーに行こうよ。ここからでもきらきらしてるのが見えるよ!」


うずうずして地団駄を踏んでいるラスの格好は先日と同じくうさ耳の帽子ともこもこの白いボアコートにブーツ。

コハクもお揃いの黒いボアコートを着て、ラスの手が凍らないように左手をポケットの中に突っ込ませると、露店に並べられている商品を眺めた。

質の良いものもあれば悪いものもがあるが、全般的にはかなりクオリティが高い。

この山からは様々な鉱石が採れるので、それを加工してリングにしたりピアスにしたり、値段も高いが買って損のないものばかりだ。


「噂以上にすげえな。チビ、どれがいい?なんでもいいぜ」


「ほんと?えーと…私はこれがいいな。天使の羽が生えてるリング!」


「えー?リングは俺がやったガーネットのやつがあるからいいだろ?ネックレスとか腕輪とかピアスとか、そういうの選べよ」


ラスの指に嵌まるのは自分が贈ったリングだけでいいと我が儘を言うコハクに仕方なく天使の羽の生えたリングを諦めたラスだったが、露店の店主は身を乗り出してラスにリングを見せた。


「これは一点ものでして、うちの村1番の彫刻師が作ったものなんですよ。値段は高いですが、その分十分価値はありますから」


「うーん…コー…駄目?」


「なんだその上目遣いは。可愛いんだよ!妥協案として、チェーンつけて首から下げるのは可!他は駄目!」


「それでいいから買ってほしいな。コー、大好き」


乗せられやすいコハクはそれで気分を良くして、平民が1年以上毎日働いても手の出ない値段のリングを専用の小箱に包んでもらうと、ラスのポケットに入れてやった。

とにかく本当に質がいい。

ただひとつ気になることがある。


値札には製作者の名が書かれてあるのだが――コハクが目をつけた品のほとんどに“アーシェ”という名が書かれていることだ。
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