魔王と王女の物語③-Boy meets girl-【完】
ラスが選んだリングも製作者はアーシェで、コハクの目に留まる品は百発百中でアーシェという人物が作った品。

繊細なラインながらも力強さと美しさを兼ね備え、しかもリングやピアスと言ったアクセサリーだけではなくレリーフや彫像も手掛けている。

その出来栄えを気に入ったコハクは、あっさりと一括でリングを購入したことでまだ搾り取れると思われたのか、手もみしている店主に声をかけた。


「このアーシェって奴、どんな奴だ?」


聞いた途端禿頭の店主の顔が歪み、視線をさ迷わせながら手もみをやめてコハクに顔を寄せて首を振った。


「関心を持つのはやめておいた方がいい。奴は…その…ちょっと変わり者なんだ。この村の地主なんだが、みんな不気味がって近寄らない。あんたも興味を持たない方がいい」


「へえ?まあアーティストは基本的に変わり者が多いからな。気に入ったものが何点かあるから購入してえんだけど」


「奴が作ったものは飛ぶように売れる。うちに出品しに来る時もフードを目深に被って顔を見せようとしないんだ。まあ…こっちも見たくはないからちょうどいいんだが」


…ますます訳が分からなくなって曖昧に相槌を打っていると――隣に居たはずのラスが居ないことに気付き、きょろりと辺りを見回した。

ラスの容姿はすこぶる目立つのですぐに見つかると思ったのだが――居ない。


「おいおい、どこに行ったんだ?チビー?」


コハクが観光客でごった返している広場をさ迷っている頃、ラスはとある露店に置いてあるピアスに目を付けて覗き込んでいた。

真っ赤なルビーで作られたと思われるピアスはコハクに似合いそうだが…ラスはお金を持っていない。


「すっごく綺麗!この石ルビーだよね?」


「お目が高い!そうなんですよ、この品は一点ものですのでお気に召したのであればすぐにご購入をお勧めしますよ」


店主と思しき若い男は、絵画から抜け出た貴婦人のように美しいラスに見惚れながらも商売っ気たっぷりに説明を始める。

ラスも買う気でいたのでその説明を聞いていると、背後に誰かが立った。

コハクが来たのだと思って寄りかかると――



「それはルビーじゃない。観光客に偽物を売りつけて詐欺をするな」


「え?コー…これ偽物なの?………コー…?」



ラスが振り返る。

背後にはフードを目深に被った男が立っていて、その瞳の色は…真っ赤だった。
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