魔王と王女の物語③-Boy meets girl-【完】
コハクが抱っこしていたルゥがやっとラスに会えて甘えたような泣き声を上げて、ラスがルゥを抱っこして頬にキスをするとすぐに大人しくなった。

カーテンを引かれた暗く埃っぽい書斎に通されたコハクとラスは、何もかもそっくりなアーシェが本棚から1冊の本をデスクに置いている姿を壁にもたれ掛って見ていた。


「ねえコー…もしかして…」


「ん、俺もそう思ってる。…多分そうだよな。そうでないとこんなに似るわけねえもんな」


ランプもつけない室内は暗く、ラスはまた勝手に窓際へ行くと、カーテンを引いて外の光を取り込んだ。

一瞬アーシェに睨まれたが、にこにこしていると気を削がれたのか肩越しに振り返ってコハクをじっと見つめる。

コハクも見つめ返していると、アーシェは古めかしい本を手にして開いた。



「…俺の家系は数世代に1人の割合で、赤い瞳の者が生まれるんだ」


「…それで?」


「俺の前に瞳が赤かったのは、6世代前。その子が村八分にされることを恐れた両親に…水晶の森に捨てられた、と書かれてある」



コハクとラスが顔を見合わせた。

やはり予想は当たったらしく、このアーシェという男は…コハクの血縁にあたる者だ。

ローズマリーの不死の魔法によって永遠に生きる者のなった今、もしかしたらいつかはこういう日が来るのでは…とコハクも薄々思うことがあった。


アーシェを見た瞬間――

この男と自分には何か不思議な縁がある、と強く感じていた。



「そっか、お前は俺の血縁なんだな」


「魔法使いだと聞いた。…じゃあ…死なないのか?」


「ま、そういうこと。じゃあここが…俺の…」


「うん、ここがコーが生まれた場所だよ。ねえコー…水晶の森はライナー山脈を隔てて反対側なんだよ。コーのご両親は長い旅に出て、別れを惜しんでたと思うの。捨てようと思って捨てたんじゃないんだよ」



――ライナー山脈を超えれば数日で着くが、この山は魔物の巣窟と成り果てている。

このルートを迂回すれば、ホルンから水晶の森までは馬車を使っても3か月ほどかかるはずだ。

両親は生まれてすぐホルンを発って、それからの数か月…苦しんだはず。


「チビ…ありがとな。そっか…ここが…俺の生家なんだな」


「…水晶の森に捨てられるまでの間に書き続けた日記がある。後悔にまみれた日記だ。…お前にやる」


アーシェが見ていた家系図の脇には、茶色い革表紙の本が置いてあった。


両親の後悔が綴られた日記――

コハクの指は、震えていた。
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