魔王と王女の物語③-Boy meets girl-【完】
もう何百年もの間、この家にひっそりと遺されていた日記――
それを手にしたコハクは、痛いほど見つめてくるラスの肩を抱いて出入口に向かった。
「…チビが世話になったな。もう行く」
「え?え、え、待ってコー。せっかくコーの一族に会えたんだからもうちょっとお話してこうよ。ね、ねっ、アーシェ!」
同意を求めるラスの必死な顔に密かに心打たれたアーシェは、ふいっと顔を背けると、コハクとそっくりの横顔を見せてラスをぽうっとさせる。
「…村の宿に滞在してるんだろ?…後で会いに行っても…」
「うん、いいよ!ね、コー、いいよね?」
「あ、ああ…まあ別にいいけど…」
冷静に立ち返ったコハクは、玄関から屋敷を見渡した。
床は軋んで古びた音を立てているし、長年風や陽の光を取り込んでいない室内はじめっとしていてとても快適とは言えない。
それにあちこちに飾られているアーシェが制作したと思われる作品は――どれもこれも、コハク好みだ。
なんだか急に笑いが込み上げて、コハクの肩が揺れた。
「ふふっ」
「コー?どうしたの?なんで笑ってるの?」
「だってさあ…さっすが俺の血縁の者だなって。手先が器用なとこも俺そっくりじゃん。…お前、結婚は?」
「…しているように見えるか?」
「ま、愚問だったな。とりあえず俺も頭ん中整理してえから、後で宿に来てくれ。一緒に飯でも食おう」
――一瞬アーシェの瞳が緩んだのをラスは見逃さなかった。
こんなところでずっと独りで――
コハクも常々“独りだった”と言っていたことがあるので、きゅんとしてしまったラスはアーシェに駆け寄って背伸びをすると、ちゅっと頬にキスをして、魔王、絶叫。
「あぁああっ、チビやめろ!俺の顔そっくりだけどやめろ!早くこっち来なさい!ルゥ、お前もなんか言ってやれ!」
「きゃうあうあ!」
「じゃあアーシェ、また後でね。絶対来てね。来てくれないとまた押しかけてあちこち触るんだから」
「それはやめてくれ。…後で絶対行く」
頬を赤らめてキスされた頬を袖で擦っているアーシェはなんだか初々しくて、ラスがルゥを抱っこして、コハクが脚を怪我したラスを抱っこすると、外に出た。
…今この世で唯一血が繋がっている男、アーシェ。
何を話そうか?
それを考えるだけで、心が浮足立った。
それを手にしたコハクは、痛いほど見つめてくるラスの肩を抱いて出入口に向かった。
「…チビが世話になったな。もう行く」
「え?え、え、待ってコー。せっかくコーの一族に会えたんだからもうちょっとお話してこうよ。ね、ねっ、アーシェ!」
同意を求めるラスの必死な顔に密かに心打たれたアーシェは、ふいっと顔を背けると、コハクとそっくりの横顔を見せてラスをぽうっとさせる。
「…村の宿に滞在してるんだろ?…後で会いに行っても…」
「うん、いいよ!ね、コー、いいよね?」
「あ、ああ…まあ別にいいけど…」
冷静に立ち返ったコハクは、玄関から屋敷を見渡した。
床は軋んで古びた音を立てているし、長年風や陽の光を取り込んでいない室内はじめっとしていてとても快適とは言えない。
それにあちこちに飾られているアーシェが制作したと思われる作品は――どれもこれも、コハク好みだ。
なんだか急に笑いが込み上げて、コハクの肩が揺れた。
「ふふっ」
「コー?どうしたの?なんで笑ってるの?」
「だってさあ…さっすが俺の血縁の者だなって。手先が器用なとこも俺そっくりじゃん。…お前、結婚は?」
「…しているように見えるか?」
「ま、愚問だったな。とりあえず俺も頭ん中整理してえから、後で宿に来てくれ。一緒に飯でも食おう」
――一瞬アーシェの瞳が緩んだのをラスは見逃さなかった。
こんなところでずっと独りで――
コハクも常々“独りだった”と言っていたことがあるので、きゅんとしてしまったラスはアーシェに駆け寄って背伸びをすると、ちゅっと頬にキスをして、魔王、絶叫。
「あぁああっ、チビやめろ!俺の顔そっくりだけどやめろ!早くこっち来なさい!ルゥ、お前もなんか言ってやれ!」
「きゃうあうあ!」
「じゃあアーシェ、また後でね。絶対来てね。来てくれないとまた押しかけてあちこち触るんだから」
「それはやめてくれ。…後で絶対行く」
頬を赤らめてキスされた頬を袖で擦っているアーシェはなんだか初々しくて、ラスがルゥを抱っこして、コハクが脚を怪我したラスを抱っこすると、外に出た。
…今この世で唯一血が繋がっている男、アーシェ。
何を話そうか?
それを考えるだけで、心が浮足立った。