魔王と王女の物語③-Boy meets girl-【完】
ログハウスに戻ると、コートのポケットの中に入れていた日記をラスが強奪してベッドに潜り込んだ。


「コー、一緒に見よ。コーのご両親はどんな人たちだったのかな。きっとこれ読めばわかるよね」


「ん、そだな。でも俺まだちょっと心の準備が…」


「じゃあ準備ができたら言って。それまでちょっとだけ読み進めてるね」


コハクはそれを止めずに、ルゥを膝に乗せて暖炉の前のソファに座った。

この赤い瞳はどうやら遺伝だったらしく、脈々と受け継がれているものだったとわかり、そしてアーシェが家に閉じこもっていることを憂いてもいた。

手先が器用なので生きていくことができたが――そうでなければ…絶望して生きる気力を失っていたかもしれない。

自分だってローズマリーに拾われていなければ、あの水晶の森で野垂れ死にしていたはず。


「ふぅ…。なんとかしてやりてえな。……ん?チビ?」


「ぐす…っ。うっ、う…っ」


「お、おい、なんで泣いてんだ!?」


「だって…コー…愛されてたんだなって思って…。でも捨てなきゃいけなくって…こんなのひどいよ…可哀そうだよ…」


嗚咽が止まらなくなったラスは日記を閉じて、おろおろして抱きしめてくれたコハクにしがみついた。



『ああどうしよう、赤い瞳の子が生まれてしまった…。こんな田舎の村では生きていけない。…そうだ、水晶の森の奥に住む魔女に託せないだろうか。この子には不思議な力を感じる。きっとどうにかしてくれる…』



葛藤しながらも、生まれたばかりのコハクを腕に抱いて村を発った両親。

いつ魔物に襲撃されてもおかしくない道中ずっとコハクを抱いたまま、何か月も旅をして辿り着いた水晶の森。


だが水晶の森の強力な魔力に気が狂いそうになり、魔女に会うこともなく、なんとか行ける場所までとふらつく頭で奥まで進み、そこでコハクを降ろした。



『捨てていく私たちを泣きもせずに真っ赤な瞳で見つめていた赤ちゃん…ごめんね、捨てていく私たちを恨んでも構わない。でもどうか生きていて…。パパもママも、あなたを愛しているわ』



――泣きじゃくるラスの肩を抱きながら日記を読み進めたコハクの瞳が潤んだ。

疎まれて捨てられたのではない――それがわかっただけで、心が楽になった気がした。


「…ほらチビ、鼻出てるぞ。はい、ちーん!」


「ちーん!」


自分の分までラスが泣いてくれる。

引っ付き虫のように離れないラスを抱きしめて、両親を想う。
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