魔王と王女の物語③-Boy meets girl-【完】
数時間後、アーシェは黒いコートを羽織り、フードを目深に被って顔が見えないようにしながら家を出た。
…心が弾んでいた。
最初はまるで鏡を見たかのようにそっくりで不気味だったが――コハクはあんなに可愛い女性と結婚できているのだから、少しだけ自信が持てた。
だが…この村に居る限り、幸せは訪れないだろう。
わかっているが…この家を捨てることはできない。
新雪を踏みしめながら宿のログハウスに向かったアーシェは、入り口でオーナーにぎょっとされて、フードを背中側に払った。
「そこに泊まっている観光客…コハクとラスと会う約束がある」
「し、知り合いなのか?そっくりすぎる。気味が悪い」
ぼそりと呟いたオーナーを無視して離れへと続く渡り廊下を歩き、ドアをノックする。
すると待ち受けていたようにすぐドアが開き、中からコハクが出てきて、小さく笑いかけてきた。
「よう、待ってたぜ。チビー、アーシェが来たぞ」
「えっ、ま、待って、こんな顔じゃ会えないよう…」
「こんな顔?」
コハクに背中を押されて中へ入ると、ラスはベッドの上で正座をして、頭から毛布を被っていた。
周囲にはティッシュが散乱していたので首を傾げていると、ラスが顔を上げた。
…綺麗なエメラルド色の瞳は潤み、周囲は赤くなっている。
鼻をティッシュで押さえてしゃくり上げてくる嗚咽をなんとか噛み殺そうとしているのだが…泣いていたのはばればれだ。
「な、なんで泣いて…」
「日記を見てからずーっとこんな感じなんだ。俺の分まで泣いてくれてるってわけ。ほらチビ、お前が泣いてるとルゥも泣きそうになるからもう終わり!な?」
「う、うっ、アーシェ、ごめんね…一緒にご飯食べよ」
コハクに促されてバスルームで顔を洗っている間、暖炉の前ではいはいをしていたルゥがアーシェを見上げていた。
瞬きをしていないのでは…という位に見つめられたが、この子の瞳も赤い。
「お前も赤いのか。よっぽどあいつの遺伝子が強いんだな」
「あぅう?」
何もかもそっくりなアーシェをコハクと勘違いしたのか、ルゥが手を伸ばして抱っこをせがんだ。
赤ちゃんを抱っこしたことのないアーシェは動揺してコハクに助けを求めようとしたが――どうにかこうにか抱っこすると、安心したように指をおしゃぶりし始めた。
「…可愛いな」
血は脈々と受け継がれている。
…心が弾んでいた。
最初はまるで鏡を見たかのようにそっくりで不気味だったが――コハクはあんなに可愛い女性と結婚できているのだから、少しだけ自信が持てた。
だが…この村に居る限り、幸せは訪れないだろう。
わかっているが…この家を捨てることはできない。
新雪を踏みしめながら宿のログハウスに向かったアーシェは、入り口でオーナーにぎょっとされて、フードを背中側に払った。
「そこに泊まっている観光客…コハクとラスと会う約束がある」
「し、知り合いなのか?そっくりすぎる。気味が悪い」
ぼそりと呟いたオーナーを無視して離れへと続く渡り廊下を歩き、ドアをノックする。
すると待ち受けていたようにすぐドアが開き、中からコハクが出てきて、小さく笑いかけてきた。
「よう、待ってたぜ。チビー、アーシェが来たぞ」
「えっ、ま、待って、こんな顔じゃ会えないよう…」
「こんな顔?」
コハクに背中を押されて中へ入ると、ラスはベッドの上で正座をして、頭から毛布を被っていた。
周囲にはティッシュが散乱していたので首を傾げていると、ラスが顔を上げた。
…綺麗なエメラルド色の瞳は潤み、周囲は赤くなっている。
鼻をティッシュで押さえてしゃくり上げてくる嗚咽をなんとか噛み殺そうとしているのだが…泣いていたのはばればれだ。
「な、なんで泣いて…」
「日記を見てからずーっとこんな感じなんだ。俺の分まで泣いてくれてるってわけ。ほらチビ、お前が泣いてるとルゥも泣きそうになるからもう終わり!な?」
「う、うっ、アーシェ、ごめんね…一緒にご飯食べよ」
コハクに促されてバスルームで顔を洗っている間、暖炉の前ではいはいをしていたルゥがアーシェを見上げていた。
瞬きをしていないのでは…という位に見つめられたが、この子の瞳も赤い。
「お前も赤いのか。よっぽどあいつの遺伝子が強いんだな」
「あぅう?」
何もかもそっくりなアーシェをコハクと勘違いしたのか、ルゥが手を伸ばして抱っこをせがんだ。
赤ちゃんを抱っこしたことのないアーシェは動揺してコハクに助けを求めようとしたが――どうにかこうにか抱っこすると、安心したように指をおしゃぶりし始めた。
「…可愛いな」
血は脈々と受け継がれている。