魔王と王女の物語③-Boy meets girl-【完】
「なあ、お前の両親はなんで死んだんだ?お前もまだ20代だろ?」


「山の遭難事故に遭って死んだ。この山は時々荒れ狂うんだ。山菜を採りに行って、吹雪に見舞われて…」


「そっか。日記によれば俺の両親は普通に寿命で死んだみてえだけど…あの日記、ありがとな。大切にするよ」


アーシェも加えたディナーはとても楽しくて、ハーレム気分のになって、にこにこしながら何度もコハクとアーシェを交互に見ながらスープを口に運んだ。


「ねえコー、アーシェが作った作品見たでしょ?コーが買ってくれたリングもアーシェが作ったんだよね。もお、すっごく好みなの!コーもでしょ?」


「ああ、さすが俺の血縁なだけあってセンスいいぜ。なあアーシェ、お前さえよかったら一度グリーンリバーに来てみねえか?オブジェも作れるんだろ?街にお前の作品置きたいんだけど」


こんな田舎にまで東の都市の情報は行き渡らない。

イエローストーン王国が崩壊した後クリスタルパレス王国が興ったことすら知らないアーシェは、グリーンリバーと言われてもぴんとこないので、きょとんとしていた。


「グリーンリバーって…お前が住んでる街なのか?」


「俺が治めてる街!1度来てみろって。そんで…その…気に入ったら…その…」


ナイフとフォークを置いて言いにくそうに口をもごもごさせているコハクの代わりにラスが後を引き継いだ。


「気に入ったら住めばいいよ。コー、部屋なら沢山空いてるもんね」


「そ、そうそうそれそれ!……やっぱ家が気になるか?」


長年満足も手入れしていないためにぼろぼろな家を今も守り抜こうとしているアーシェの決意は美しいが…彼の才能をこんな田舎に埋もれさせるわけにはいかない。

ラス以外の何にも執着しないタイプのコハクは、珍しく身を乗り出してそっくりな顔が困り果てているのをわかっていながらも、止まらなかった。


「俺は家を守りたいんだ。誘いは嬉しいけど、それはちょっと…」


「家が守られてればいいんだな?だったら俺に任せろよ」


「?何を…するつもりなんだ?」


「ふふん、俺は世界一かっこいくてセクシーで最強な魔法使いなんだぜ。俺にできねえことなんざねえよ」


「さすがコー!魔法を使うの?どんなの使うの?わくわくする!」


「明日のお楽しみー。俺は絶対お前をグリーンリバーに連れてくからな。覚えとけ!」


捨て台詞…いや、決め台詞を見事に決めた魔王は、隣のラスの頬をぺろぺろ舐めて椅子にふんぞり返った。
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