魔王と王女の物語③-Boy meets girl-【完】
深夜まで話が弾んでしまい、街灯の無い真っ暗な闇夜をアーシェは歩いていた。

寒さは感じない。

むしろぽかぽかした気分で家に戻り、古めかしい音を立てて扉を開けると中に入ってランプの炎を燈した。

作業部屋で浮かび上がった水晶の女性像を見つめていると、これで満足してはならない、とアーティストの自分が心の内から訴えかけてくる。


「まだだ…もっと満足のいく出来にしないと…」


美しい女性像に、ラスの笑顔が重なった。

家に帰りつくまではこの心地よいあたたかさを感じながら眠ろうと思っていたのだが…実際は彫刻刀を手に女性像の前に立っていた。


「顔が違う…。もっとしなやかに…伸びやかに作らないと…」


少しずつ少しずつ、顔を削っていく。

ラスに注意されたにも関わらず、また時間も忘れて水晶の女性像を彫り続けてしまったアーシェは、明け方ようやく満足のいく出来に仕上がって、椅子に座ってぼーっとしながら女性像を見つめていた。


「…できた。手元に残したいけど…あいつらにやろう」


コハクが治めているというグリーンリバー。

どんな街かもわからないが、この像が街に美しさをもたらすことができるならば、作った甲斐がある。


「…ん、誰か来た…」


実はさっきからドアを叩く音が聞こえていたのだが、余韻に浸っていたかったアーシェはそれを無視し続けていた。

ようやく出る気になって椅子から立ち上がると、ドアを開けた途端――ぷんむくれしたラスと鉢合わせ。


「アーシェ!その顔…また寝てないんでしょ!駄目だよちゃんと寝ないと駄目!」


「や…寝るつもりだったけど…あれを作ってたらいつの間にか朝になってた」


指で頬をかきながら中に引き入れたアーシェは、欠伸をしているコハクに抱っこされているルゥに手を伸ばされて抱っこをせがまれると、おどおどしながらコハクからルゥを受け取った。


「そーっとな。おお、なんだこれ!チビじゃん!まるっきしチビ!」


「わあ!昨日と違う!これを作ってたの?私こんなに綺麗じゃないもん。でも昨日より全然いいよ!」


「…あんたをイメージして作り直したんだ。気に入ったのならやる。持って帰れ」


女性像をあらゆる角度から瞳を輝かせながら見ていたラスが抱き着いてきた。

動揺してフリーズしていると、コハクは面白くなさそうに鼻を鳴らしたが、女性像の出来栄えには驚嘆していた。


「よし、絶対お前をこの村から連れ出す。見てろよ」


またもや決め台詞。
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