魔王と王女の物語③-Boy meets girl-【完】
アーシェが不気味な程そっくりな男と、美少女…いや、美女というべきか…見惚れてしまうほどに綺麗な女と共に村を降りて行く――

この村を治めている家系のひとり息子だったアーシェは、また目深にフードを被ると、長老ともいうべき村の年長者の家を訪ねて頭を下げた。


「俺が離れている間村を頼む」


「…戻って来るのか?お前の後ろに立っているそっくりな男は何者じゃ」


「…わからない。こいつは…俺の血縁の者だ。こいつらのために作品を作りに行く」


「そうか…。お前さんはもっと広い世界を見た方がええ。後は儂に任せておけい」


その間コハクとラスは一切口を挟まず、どちらかといえばアーシェを好意的に感じているらしき長老に同じように頭を下げて小さな家を出た。

村の住人たちは遠目からコハクたちを窺い、アーシェはそれを気にしていたが――コハクとラスは見られることに慣れているので、なんとも感じずに楽しそうに何かを話している。


…この2人は自分を不気味がらない。

それだけで胸が熱くなって俯いて大きく深呼吸をしていると、ラスが脚を滑らせて転ばないようにしっかりを雪を踏みしめながらアーシェに笑いかけた。


「あんまり村を見て回れなかったけど、また来ればいいよね。その時はアーシェのお家に泊まればいいよね」


「あー、そうすっか。で。どうする?船で帰るのか?それともケルベロスがドラを呼ぶか?」


「アーシェは船に乗ったことないんでしょ?じゃあ船で帰ろうよ。北回りに帰れば早いよね?」


「北ルートには俺の城があるし、潮流が激しいから誰も使わねんだけど…ま、俺の素敵な魔法で船が揺れねえようにしてやるよ」


村を出てある程度下っていくと、コハクは指をぱちんと鳴らして無人の馬車を出した。

アーシェが目を丸くする中慣れているラスがさっさと先に乗り込んでアーシェに手を差し伸べる。


「この馬車全然揺れないんだよ。港までこれに乗って行くからアーシェも早く早く」


「あ、ああ…。あいつ…本当にすごい魔法使いなんだな」


「そうだよ、魔法使いはもうコーだけなの。お料理もできるし、なんでもできるの。はいルゥちゃん、アーシェに抱っこしてもらおっか」


コハクが乗り込むと馬車が走り出し、盛んにアーシェに手を伸ばしていたルゥを抱っこさせたラスは、コハクの膝の上に収まる。

見つからない程度にそんなラスにちらちら目を遣っていたアーシェは、ラスのネックレスのトップに自分が作ったリングが下げられているのを見て、嬉しそうに笑った。
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