魔王と王女の物語③-Boy meets girl-【完】
船にはじめて乗ったアーシェは、子供のように甲板と船内を行ったり来たりしてコハクとラスを笑わせていた。
時折スケッチブックを開いては真剣な顔で何か描いているし、見ようと思って近付けばすぐにスケッチブックを閉められて取りつく島もない。
ぷうっと頬を膨らませたラスは、遠くに見える暗雲と雷の嵐が止まない魔王城を見ないように、木にしがみついている蝉のようにコハクに抱き着いていた。
「アーシェがスケッチブックを見せてくれないの。コー、どうにかして」
「芸術家っていうのはさあ、未完成のものは見せたくないわけ。完成したら見せてもらえるって」
「そう?じゃあ私、水晶の女性像を見てくるね。あれ見てるだけで全然飽きないから」
コハクがラスの影に入れて船内に運び込んだ水晶の女性像は、四方が水槽のような船の地下の部屋へ行った。
だが先客が居たらしく、丸い窓からそっと中を覗き込むと――
右手の甲を差し出してキスを待っているかのような女性像の手の甲に、アーシェがキスをしていた。
なんとなくどきっとしてしまったラスがこのまま声をかけずに甲板に戻ろうと思って身を翻した時、船が大きく揺らいで転んでしまった。
「きゃっ」
「…ラス?」
中から転んだ音に気付いたアーシェが出て来ると、何故か焦ったラスは顔が赤くなるのを感じながら、大きく手を振って大丈夫なことをアピールした。
「だ、大丈夫!ちょっと転んだだけだから」
「手を。引っ張ってやる」
船が揺れてなかなか立ち上がれずにいると、アーシェが手を引っ張って立たせてくれた。
だがそれだけでは終わらず――手をじっと見つめられていると感じたラスは、握られている手を離してもらおうと大きく振ってみる。
「大丈夫だから手を離してっ」
「…やっぱりいくらあんたに似せても同じじゃないな」
「え?どういう意味?」
きょとんとした顔のラスをじっと見つめたアーシェは、ぱっと手を離してラスの背中を押した。
「俺はもうちょっとここに居たいから上に居てくれ。集中力が途切れる」
「う、うん、わかった」
コハクのクローンではないのかと疑うほどにそっくりなアーシェに見つめられて不覚にもどきっとしてしまったラスは、甲板に飛び出ると、コハクの背中に抱き着いた。
「ん?チビ、どした?」
「なんでもないもんっ」
どきどき、どきどき。
時折スケッチブックを開いては真剣な顔で何か描いているし、見ようと思って近付けばすぐにスケッチブックを閉められて取りつく島もない。
ぷうっと頬を膨らませたラスは、遠くに見える暗雲と雷の嵐が止まない魔王城を見ないように、木にしがみついている蝉のようにコハクに抱き着いていた。
「アーシェがスケッチブックを見せてくれないの。コー、どうにかして」
「芸術家っていうのはさあ、未完成のものは見せたくないわけ。完成したら見せてもらえるって」
「そう?じゃあ私、水晶の女性像を見てくるね。あれ見てるだけで全然飽きないから」
コハクがラスの影に入れて船内に運び込んだ水晶の女性像は、四方が水槽のような船の地下の部屋へ行った。
だが先客が居たらしく、丸い窓からそっと中を覗き込むと――
右手の甲を差し出してキスを待っているかのような女性像の手の甲に、アーシェがキスをしていた。
なんとなくどきっとしてしまったラスがこのまま声をかけずに甲板に戻ろうと思って身を翻した時、船が大きく揺らいで転んでしまった。
「きゃっ」
「…ラス?」
中から転んだ音に気付いたアーシェが出て来ると、何故か焦ったラスは顔が赤くなるのを感じながら、大きく手を振って大丈夫なことをアピールした。
「だ、大丈夫!ちょっと転んだだけだから」
「手を。引っ張ってやる」
船が揺れてなかなか立ち上がれずにいると、アーシェが手を引っ張って立たせてくれた。
だがそれだけでは終わらず――手をじっと見つめられていると感じたラスは、握られている手を離してもらおうと大きく振ってみる。
「大丈夫だから手を離してっ」
「…やっぱりいくらあんたに似せても同じじゃないな」
「え?どういう意味?」
きょとんとした顔のラスをじっと見つめたアーシェは、ぱっと手を離してラスの背中を押した。
「俺はもうちょっとここに居たいから上に居てくれ。集中力が途切れる」
「う、うん、わかった」
コハクのクローンではないのかと疑うほどにそっくりなアーシェに見つめられて不覚にもどきっとしてしまったラスは、甲板に飛び出ると、コハクの背中に抱き着いた。
「ん?チビ、どした?」
「なんでもないもんっ」
どきどき、どきどき。