魔王と王女の物語③-Boy meets girl-【完】
小さな村で生きてきたアーシェにとって――グリーンリバーは途方もなく美しく、大きすぎた。


「すごい…!こんな綺麗な街があるなんて…!」


「ここは元々王国だったし敷地はまだまだ余ってて改革の余地もある。俺としてはお前の作品をあちこちに飾ってもっと綺麗な街にしたいんだけどさ」


「こんなところに俺の作品を?恥ずかしいからやめてくれ!」


コハクとラスと共にグリーンリバーにやって来たアーシェを見つけた住人たちが呆気に取られた顔をした。

フードを被る必要はない、とコハクに言われてコートを脱いだアーシェの姿は、本当に何から何までコハクそのものだからだ。


「ふふっ、驚いてる驚いてる。ちなみに俺たちが住んでるのは街の1番奥な。…あっ、チビっ、離れるなって!迷子になるだろが!」


「大丈夫ー」


「大丈夫じゃねえから止めてんだろが!ったく…。チビはいつもあんな感じなんだ。マジで目が離せなくて大変なんだよ毎日」


「見ていればわかる。…で?街の様子が…おかしいと思うのは俺だけか?」


――あちこちに見受けられるエプロン姿の魔物たちと親しげに会話を交わしている住人たち。

アーシェの村にも時々裏山から魔物たちが降りてきて暴れることはあるので、魔物は凶悪で驚異の存在だ。

だが醜悪な姿をした魔物がエプロンをつけているシュールな姿と、恐れを感じていないのか一緒に花壇に花を植えたりしている姿は、アーシェにとっては受け入れ難かった。


途端――街の前方から世にも恐ろしい低い咆哮が轟いた。

思わず身を竦めたアーシェに笑い声を上げたコハクが唇に指をあてて口笛を吹いてしばらく待っていると――城の屋上で何か黒いものが舞い上がる。


「あ、あれは…ドラゴン!?」


「まあな。で、背中に乗ってんのが俺のダチっていうか、死神」


「し、死神!?」


いちいち驚くアーシェの反応が面白くて笑い声ばかり上げているコハクの機嫌はすこぶる良く、ちょろちょろしていたラスが戻って来ると、急速に向かってくるドラゴンに大きく手を振った。


「ドラちゃーん!デスー!」


「ドラゴンに…死神…!お前たちって一体…」


ごくりと喉を鳴らしたアーシェに見せつけるようにしてラスの肩を抱いて胸を張ったコハクは、笑い合いながらちょっと自慢そうににやりと笑った。


「俺たち?俺たちはただの魔法使いと元王女様さ。ま、最強の魔法使いと最高の美女、でも可!」


自慢爆発。
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