魔王と王女の物語③-Boy meets girl-【完】
アーシェがラスに襲われている様は、またヘンタイ色ぼけ魔王をにやにやさせてしまった。


「なんだあの光景…!俺が!俺が襲われてる!」


「……魔王…ここに…居る…」


「比喩だ比喩!あああどうしよう、アーシェを連れてきて正解だった!」


指をわきわきさせてにじり寄るラスの猛攻からようやく逃れることができたアーシェは、真っ赤な顔をしてベビーベッドでうにうにしているルゥのところまで逃げていた。

…こんな風に誰かとはしゃぐことも生まれて今までなかったことなので、なんだか新鮮で…とても嬉しい。

が、表情筋が豊かではないアーシェはあまりそれを表情に出せず、コハクに小さく頭を下げた。


「俺…嬉しいんだけど、感情を表に出すのが下手で…」


「あー平気平気。こいつもほっとんど笑わねえし喋んねえから。しばらくここに住んでみろよ、街も案内するし城ん中も案内すっからさ」


笑わないし話さないと紹介されたデスは、少しむっつりしながら骨だけの指を組み合わせてかちかちと音を鳴らした。

アーシェからすればデスは死神だし、白い骨の指は不気味だが…死神という存在はもっと恐ろしくて怖いものだと思っていたので、そういう点ではほっとしたし、それに――


「優しい死神、か…。後で少し話をしないか?新しいものが作れそうな気がする…」


「…………うん…」


ほっこりした空気に包まれて皆でにっこりした時――短いノックの音と共に、太股半ばまでのシャギーの入った短い白いスカートを履いたグラースが顔を出しに来た。

グラース大好きのラスはすぐさまグラースに駆け寄ると、新顔が居ることで値踏みするような眼差しでアーシェを眺めまわす。


「魔王のドッペルゲンガーか?」


「ちげーし。ああまた説明しなきゃいけねえのかよ」


そう言いながらもコハクはどこか嬉しそうにしていたが、ラスとはまた違う妖艶な雰囲気を全身から発している美女の登場に、アーシェは思わずぼそり。


「さすが都会は違うな…。皆が皆顔が整っているし、洗練されてる感じだ」


「こんなのがごろごろ居ると思うなよ。ま、俺たちが美男美女だから必然と俺たちの周りにはそういうのばっかが集まるってわけ。なー、チビ」


「あ、そうだ!ティアラとリロイにアーシェのこと伝えなきゃ!お手紙お手紙!」


まるでコハクを無視してデスクに向かったラスの反応にまた吹いたアーシェは、はじめてひとりではないゆったりとした時間を味わっていた。
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