アウトサイダー

「紗知!」


混乱した私を強い力で抱き寄せたのは、永沢さんだった。


「紗知、しっかりしろ!」

「どけっ、紗知は俺の女だ」


彬さんが引き離そうとしても、永沢さんは私を抱き寄せる手を少しも緩めない。


「大丈夫だからな、紗知。お父さんはいない」


私の耳元で優しくささやかれるその言葉に、我に返った私は小さく頷いた。
そして、彬さんの方に顔を向けた永沢さんが、冷静に口を開いた。


「彼女がかつて心に思っていた人がいることは、俺も知っている。
だから、あなたが紗知に怒りをぶつけたことも。
失礼だが、そんな君に彼女を守るのは無理だ」


「失礼なのは、どっちだ」



私は怖くて怖くて、目を閉じてただ荒い息を繰り返す。


< 290 / 576 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop