アウトサイダー

「なにもないなら失礼するよ。行こう、紗知」

「あっ、はい」


そう言われるまで一体何秒あったのかはわからない。

だけど、私と太陽の視線が絡まって、そこから逸らすことすら許されないような威圧感もあって、息をすることすら忘れそうだった。



永沢さんが私の手を引いて、彼の前を通り過ぎようとしたとき、やっと聞こえる小さな声で私の名が呼ばれた。


「紗知……」


それは、まぎれもなくあの頃と同じ彼の声。

ほんの少しだけ低くなったようなその声は、いつまで経っても忘れることができないでいる、あの頃と同じ優しい音色。


< 325 / 576 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop