アウトサイダー

それからどれくらい彼の胸の中にいただろう。
目を閉じて彼の鼓動だけを聞いていた。

彼は私のことをわかりすぎるほどわかっている。
どうして、こんなに優しい人を選ぶことができないのだろう。



「ごめん、紗知」


ゆっくり私を離した彼は、もういつもの落ち着きを取り戻していた。


「仕事、戻らないとな」


眉間にシワをよせながらそう笑って見せる永沢さんに、私は小さくうなずいた。



事務所に帰った彼は、さっきとは別人だった。
たまっている仕事を片っ端から片付けていく。


「CADで清書に入るから、ちょっとひとりにしてくれ」


彼は最後の大詰めの時、必ず人払いする。
それは集中することで、より良いものを作り出そうという彼の姿勢だ。


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