金色のネコは海を泳ぐ
「あらあら、泣くほど痛かったの?」

そう、優しい声が聞こえて顔を上げると、オロを抱いた母――ブリジッタ――がドアのところに立っていた。

「お母さん……」
「ほら、見せて」

ブリジッタはルーチェに近づいて、オロを机に乗せた。そして近くにあった椅子を引き寄せ、ルーチェに向かい合って座る。

ルーチェの腕を優しく取って、呪文を施してくれるブリジッタ。

ひんやりと心地よい冷たさがルーチェの肌を撫でる。波に揺られているような、自分が海になったような……不思議な気持ち。

「はい、できた」

ニッコリと笑ったブリジッタの顔を見、そして綺麗に傷が消えた自分の腕を見た。

何か……

「それじゃ、私は受付に戻るわよ」
「ま、待って!」

立ち上がろうとするブリジッタの腕を咄嗟に掴む。

「も、もう1回、やって!」
「えぇ?だって、もう治ったじゃない」

ブリジッタは娘のおかしな発言に首を傾げた。
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