金色のネコは海を泳ぐ
「お姉ちゃーん?お母さんがご飯は食べなさいって言ってるよー!」

近づく足音と共に、アリーチェの声が聴こえてくる。

「わわっ!ちょっと、ジュスト!ホントに離れて!」

一気に眠気も吹っ飛んだルーチェはぐいぐいとジュストを押し返した。こんなところを見られたらなんと言い訳をすればいいのかわからない。そもそも、人間の男の子がいること自体がおかしい。

「どうして?僕、昨日寝てないから眠いんだ……一緒に寝てもいいでしょ?」
「ダ、ダメだよ!」

良くない!非常にまずい!

「お姉ちゃん?入るよ」
「ま、待って。ダメ!アリーチェっ!入ってきたら――っ」

ダメ、とルーチェが叫ぶのと同時に何かが弾けるような音がしてルーチェを拘束していた腕がなくなった。

「ダメって一体何して――っていうか、オロ、帰ってきてるじゃない」
「へ……?」

横を見ると、ジュストはネコに戻っていてすやすやと身体を丸めて眠っていた。

「いつ帰ってきたの?」
「え……あ、さっき、ね……」

ルーチェはなんとか笑顔を作った。はぁっとため息をついて、ジュストに布団を掛けた。小さくなってしまったジュストに安心したような、薬が効かなくて残念なような……変な気持ち。

「ジュスト……」
「お姉ちゃん?」

小さく呟いたルーチェを振り返って首を傾げるアリーチェ。ルーチェは「何でもない」と言ってリビングへと下りていった。

次はどんな風に薬を調合したらいいのか考えながら――
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