金色のネコは海を泳ぐ
『ねぇ、ルーチェ……僕、それ飲まなきゃダメ?』

ジュストが怪訝そうな声を出し、ルーチェはちょうど小瓶に分け終わった薬の1つを手に取った。ジュストが飲みたくないと思うのも当然だろう。

緑を通り越して、なんというか……茶色いからだ。

先日少しだけ効果のあった変化の呪文を破る薬を改良していたら、毒でも調合しているのではないかと思ってしまうほどの品が出来た。それも大量に。

「でも、この前よりは効きそうじゃない?」

あはは、と乾いた笑いを漏らしながらルーチェは肩に乗っているジュストの鼻先に小瓶を差し出した。

『僕、死にたくない』
「あのねぇ……この前より強めに調合したから色は変だけど、死んだりしないわよ」

先日は10分ほどでネコの姿に戻ってしまったジュスト。

リトルノの根を漬ける時間を更に長くし、量も多く入れてみた。効き目は高まっているはずだ。

しかし、気になることが1つある。

ジュストが薬を飲んでも“ネコに戻った”ということは、ジュストにかけられている呪文は変化の呪文ではないということだ。

短時間とはいえ薬が効いたので似たような呪文なのかもしれないが、根本的な解決にはならない。

「また図書館に行かなきゃね」

呪文について調べるなら図書館が適しているだろう。ジュストによると、ユベール王子とはまた図書館で会ったらしいので、運が良ければ何か話を聞くこともできる。
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