金色のネコは海を泳ぐ
「い、嫌!ぜーったいに嫌だからねっ!」
「あっ!お姉ちゃん!」

ルーチェは向きを変えると一目散に走り出した。いくら試験のためとはいえ、もう我慢できない。

勢い良く自宅に入り、階段を駆け上がった。

「にゃう」

ところが、オロが先回りしてルーチェの部屋の前に立っていて、くるりとルーチェが振り向くと今度はアリーチェが恐ろしい鉄バットと共に。

ルーチェはやけになって、近くのドアを開けた。

両親の部屋のベランダから自分の部屋のそれへと乗り移れると思ったからだ。自室には鍵を掛けてあるから、窓を閉めてしまえばルーチェは逃げ切れる。

思ったより……距離があるけれど。

ゴクリと唾を飲み込んで、手すりの反対側へ。自分の部屋のベランダに手を掛けて――

「お姉ちゃん!」
「わっ、え!?きゃ――」

アリーチェの声に驚いて手が滑り、浮遊感に内臓が踊った。

「あ」
「にゃあん」

ここは3階。

とても晴れた日の昼下がり、ルーチェの叫び声がバラルディ診療所に響いた。
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