金色のネコは海を泳ぐ
――結局。

「「「ルーチェ、おめでとう!」」」

13回目の卒業試験をルーチェは無事に通った。明日からは、バラルディ診療所の父と母のもとで研修を始めることができる。

家族はみんな、とても喜んでくれて今日の夕食はルーチェの好物が並んでいる。

「でもさ、良かったよねぇ。1週間前に骨折しておいて」

アリーチェがニコニコしながら言うのをじろりと睨みつけたけれど、アリーチェは特に気にした様子もなく、お祝いのケーキを頬張っている。

そう、卒業試験には骨の修復が実技として出された。実際には、折れた木を直すのだが。

確かに結果的には良かったのだろうけれど……相当痛い思いをしたのだ、これで受からなかったらオロを海に返しただろう。

ルーチェはリビングの隅でケーキを舐めるようにして食べているオロに視線を向けた。

不思議なネコ。

金色に輝く毛、琥珀色の瞳、人と同じものを食べたがり、人の言葉を理解する……ルーチェの指導(?)まで。

「にゃうん?」

ルーチェの視線に気づいたらしいオロが顔を上げた。目が合うと、素早くルーチェの膝に飛び乗る。

ルーチェはオロを抱き上げて、目線を合わせた。

「……ありがとう」

そう言うと、オロは「にゃー」と鳴いた。
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