金色のネコは海を泳ぐ
それにしても、テオがそんな乙女チックなまじないを信じていたとは知らなかった。

テオは外見について言えば良くも悪くもない、いわゆる平均的な顔立ちと体格だ。

だが、爽やかで清潔感のある見た目としっかりした性格で面倒見も良いことから、好意を寄せられて嫌だと思う女の子も少ないとルーチェは思う。

しかも、将来はクラドール。ストレートとまではいかないかもしれないが、2・3回もあれば国家試験も通るだろう。

まさに平凡で堅実な……そう、結婚向きな男!いつだったか、アリーチェがルーチェのクラスに来たときの分析結果だ。

「伝わらないんだよ……」

テオはため息をついて自分の紅茶を飲んだ。

「伝え方が悪いんじゃないの?」
「受け取り方が悪いんだよ」

ああ言えばこう言う。大体、女の子のせいにするなんて男じゃない。

ルーチェは少しイラッとして、クッキーを頬張った。すると、ルーチェの思っていることを察したらしいテオがルーチェをしっかりと見つめる。

「わかった。ちゃんと言うから…………ルーチェ」
「な、何よ……?」

急にトーンが変わったテオの声に、ルーチェは思わず背筋を伸ばす。口元にある食べかけのクッキーを口に入れることも忘れてしまった。

「好きなんだ」
「好き……?」

首を傾げて聞き返すと、テオは力強く頷いた。

“好き”

そう、か……

「な、なんだ……もう、いきなりビックリしたよ?もっと、その……早く言ってくれれば良かったのに」

知らなかった。テオがこんなに真剣に――
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