金色のネコは海を泳ぐ
『ルーチェは僕よりテオを助けるの?』

拗ねた声に机の上にちょこんと座っているジュストに視線を向けると、ジュストはじっとルーチェを見つめていた。

「助けるっていうか、断る前に出て行っちゃったんだから仕方ないじゃない」

ルーチェだって好きでやっているわけじゃない。

大体、毎日の研修にジュストを人間に戻すという課題、そして今度は惚れ薬を作れなどと……ルーチェだって暇ではないのに。

『僕のこと、人間に戻してくれるって言ったのに!』

毛を逆立てて叫んだジュストに、ルーチェは思わず立ち上がって言い返した。

「私だって忙しいの!ジュストのことばっかり考えていられないんだから!」

トラッタメントだってまだ完璧にできるわけではないし、バラルディ診療所の薬の調合は今やほとんどルーチェの担当。もちろん、自分の技術を認めてもらえるのは嬉しいけれど大変なのは事実だ。

1日の仕事を終えてからジュストのために薬の研究もして、やっと眠れるのは日付が変わる頃。

そうしたら今度は突然のテオの訪問に惚れ薬、そしてジュストのわがまま……ジュストは人間でいたことがないから、ルーチェの気持ちなどわからないのだ。

「ジュストはネコだか――っ」

そこまで言って、ルーチェは口を押さえた。だが、それは遅かったようで。

『僕、人間だもん……ルーチェ、僕が喋るようになってからイジワルだ!抱っこもしてくれないし、一緒に寝るのもやめるし、僕のこと嫌いになったんでしょ!もういい!』
「ちょっ、待って!ジュスト!」

ルーチェの制止も聞かず、ジュストは軽々と机から飛び降りて調合室を出て行ってしまった。
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