ダブルスウィッチ
「あなた……よくもそんなに簡単に別れるなんて言えたわね?

亮介さんの良いとこばかりしか見てこなくて、たった数時間冷たくされたからって、ちょっとひどいんじゃない?

しかもそれはあなたに対するものじゃなくて、私に対するものでしょう?

あなたが、亮介さんと一緒になりたいって気持ちはそんなものだったの?」


彩子は許せなかった。


愛人の存在など所詮趣味のようなもの。


妻という立場はそのまま生活、日常なのだ。


その立場が欲しいと趣味の領域を自ら越えておいて、やはり自分には無理だと投げ出す無責任さ。


だったら最初から望まなければ良かったのだ。


彩子はもう10年以上、報われない生活を続けている。


好きだ好きだと言いながら、少し違う面を見ただけで放り出すような、そんな甘いものじゃなかった。


契約に縛り付けられ、身動きが取れないまま、彩子はいつの間にか40を過ぎてしまっている。


いつか、自分の方を向いてくれるんじゃないかという、わずかな期待にすがったまま。


だから悔しかった。


この子には覚悟が足りないのだ、と。


人のものに手を出すからには、それ相応の覚悟があるんだと彩子なりに思っていたのに……


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