ダブルスウィッチ
えみりはそれでも冷静だった。


彩子を哀れむように眺めながら、悲しそうに笑う。


「とりあえず、座りませんか?」


彩子は自分の姿をしたえみりを奇妙な目で見つめた。


(この子……どうしちゃったの?)


もっと懇願するように元に戻ることを訴えてくるとばかり思っていた彩子は、えみりの態度に拍子抜けしてしまう。


「お、お茶でもいれるわ」


いたたまれなくなった彩子はそう言って、キッチンと呼ぶには小さすぎる場所へと移動する。


備え付けの冷蔵庫を開けるも、相変わらず入ってるものは少ない。


「あ、うち何にもないんで、おかまいなく」


えみりがすかさずそう言って、彩子はようやくここは彼女の部屋であることを思い出す。


振り返ればえみりがエアコンをいれたらしく、涼しい風が体を吹き抜けた。


すでにえみりは小さなテーブルの前に座っており、彩子も早く座るよう目で促している。


仕方なく観念した彩子は、えみりの対面にゆっくりと腰をおろした。


「話っていうのは、私のことじゃなくて、あなたのことなんです、彩子さん」


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