ダブルスウィッチ
「そんな……ひどい」


えみりは泣きそうに顔を歪めて、そう呟いた。


「そうね?ひどいのかもしれない

でもその時は、絶対に離婚はしないんだって安心感みたいなものさえ感じたの

まさか、10年後に浮気されるなんて思ってもみなかったから……

その条件がこんなに重くのし掛かるものだなんて、わからなかった」


話しているうちに、彩子は自分の頭の中がすっきりと整理されていくことに気づいた。


誰にも言えなかった、亮介との異常な関係。


それを誰かに話すことで、それに固執していた自分が、亮介にではなく自らがんじがらめになっていたのだと気づく。


「だけど、浮気されてまでそれを貫こうとするなんて、おかしいと思わなかったんですか?」


彩子はえみりの悲痛な叫びを、どこか冷静に見ていた。


なんでこの子が必死になっているんだろう?と、可笑しくなってくる。


「そうね?確かにそうだわ

だけど、浮気をしないとも条件にかかれていなかったわけだから、責める資格もないのかもしれないわね?

あの契約書にサインしたのは私

私の方にも打算がなかったとは言えないから」

< 169 / 273 >

この作品をシェア

pagetop