ダブルスウィッチ
諦めたように彩子がそう言えば、えみりの顔はどんどん険しくなっていく。


「……私が言うのもおかしな話ですけど……

そんな関係って間違ってると思います

契約だけに縛られた結婚なんて……悲しすぎる」


「なんで……あなたが泣くのよ

私の顔で……泣かないで……?」


こらえきれずに泣き出したえみりを宥めるように、彩子は優しくそう声をかけた。


泣いているのはえみりだとわかっていても、姿は自分のもの。


自分が泣いている姿を客観的に眺めている光景に、彩子は自分がどんどん冷静になっていくのを感じた。


皮肉にも今まで蓋をしていたやるせない気持ちを、えみりが全部ぶちまけてくれたような、そんな気分。


この子の言うとおりだ、と彩子は思う。


自分は何をそんなにあの結婚生活にしがみついていたんだろう?と。


浮気はしないとは書かれていなかったけど、浮気をするとも書かれていなかった。


それにそれは普通に考えたらタブーなものなわけで、離婚しないと契約したからといって、当たり前のようにしていいものじゃない。


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