ダブルスウィッチ
ゆっくりとまぶたを開けると、そこに広がる自分の空間に彩子はそっと安堵した
。
たまに今の生活が夢なのではないか?
本当はまだ落ち着かない家具に囲まれたあの家に囚われているのではないか?
そんな錯覚に襲われることがある。
あの家には毎日通ってはいるけれど、その度に思い出すのだ。
亮介との冷え切った夫婦生活を送っていた10何年のことを。
だから彩子にはリセットする場所が必要だった。
この部屋にはそんな意味がある。
ふと、日曜日のことを思い出して、ホームパーティーに出す料理はなににしようか?と思い巡らす。
自分の得意分野である料理やもてなしに関して、仕事としては向いていると感じていた。
それが当たり前だと、感謝もされずにやっていた頃とは違う充実感が、今はある。
ゆっくりとソファから立ち上がり、ノートパソコンの置いてあるカウンターの前まで近づくと、電源ボタンをそっと押した。
立ち上げてネットにつなぐと、『入れ替わる』と検索してみる。
あの日、偶然目にしたそのサイトは、あれ以来一度もヒットしない。
えみりと入れ替わったあの2日間、不思議な薬の効果は確かに現れたというのに、なぜ見つけられないのか彩子には理解できなかった。